2013/02/13

都市伝説と殺人、レイプ、暴動



日本での南京落城(1937)に伴う史実ついての議論を聞くと、捏造という観点は聞きますが、都市伝説という観点を聞きません。日本語に元々あった概念ではないのでそういう観点が出てこないのかも知れません。しかし、捏造というだけでは、ここに引用することがはばかれるようなことを皆が簡単に信じてしまうという現象も、情報の発信者とそれを受け入れる側の両方にみられる思い込みも説明することは難しいように思われます。

NY TimesMore Horrible Than Truth: News Reports とい記事から孫引きすると、都市伝説というのは、混乱に陥った無法状態の都市の話として原始的な深層心理をくすぐる話し、そのときの社会秩序についてのその時点でのアイデアや偏見を満足する話しとして受け入れられると説明されています(原典はCarl Smith, a professor of English and American studies at Northwestern University and the author of "Urban Disorder and the Shape of Belief." )。つまり、都市伝説が明らかにするのは、その対象となった人々のことではなく、その話を流布し受け入れた人々が自分の伝統や体験に基づいてどんなことが起きてしかるべきと考えているかなのです。

実は上の記事はハリケーン・カテリーナで大洪水にみまわれた直後のニューオーリンズからの報道がいかに都市伝説のオンパレードだったかの説明です。

南京落城と洪水下のニューオーリンズを比べると次のようにその類似点が見えてきます。

関係者
洪水下のニューオーリンズ
南京落城
住民と占拠者
貧しい黒人。(残っていたのは街を出るにも車もお金も行く場所の当てもなかった人々がほとんど。)
貧しい中国人と日本軍。(金持ちは落城の数週間前に南京を出ていた。アイリス・チャンの祖父母も脱出組み)
当時の情報源
市当局、現地入りした報道陣、脱出できた旅行者、
安全区に留まっていた27人の西洋人、脱出できた裕福な中国人、アメリカのレポーター
当時情報を受け入れた人々
アメリカ政府、メディア、一般のアメリカ人
アメリカ政府、メディア、一般のアメリカ人
偏見の対象
貧しい黒人
東洋人(西洋人が中国人と日本人を区別して見ていたかどうかは疑問)
ちなみに、南京落城が後になって大々的に取り上げられたことが少なくとも3回ありました。しかもそれはFrank Capra のプロパガンダ映画(1944)、極東軍事裁判 1946~1948)、アイリス・チャン の本(1997) とすべてアメリカ発です(アメリカ特有の問題というつもりはありませんが)。

NY Times紙が取り上げたニューオーリンズでの都市伝説の話はさらにこの記事この記事に続きます。いろいろ読むと、実は都市伝説のせいで救出活動自体が大幅に遅れたことが分かります。偏見と差別がメディアや政府当局の対応のいい加減さの根元にあったと多くの人が感じたようです。そのとき報道された都市伝説を片っ端から集めたこのブログからは強い憤りが伝わってきます。実際はどうだったのかを知るには、そのときニューオーリンズに閉じ込められていた人々の生の声をまとめたこの番組がお勧めです。ハイライトは、市当局は、もうすぐバスが来ますとか、どこそこにバスが来ていますという嘘で、疲れ切った人々をあの暑さの中、こっちからあっち、あっちからこっちへとたらい回しに移動させたり整列させたりを繰り返していた。拳銃を持って街中を荒らし回っていると言われていた"ギャング"は、役立たずの市当局に代わって飲み水などの物資の確保と配給を仕切っていた。隣町の警察は自分たちの街を荒らされることを恐れて、橋を渡ろうとして歩いてきた人々を助けようとしなかったばかりか、銃を発砲して脅し、隣町に入ることを阻止していた、などという話です。

さて、この都市伝説(英語ではUrban MythUrban LegendContemporary Legendなどと言いますが)、伝説とか神話とかいうと人畜無害に聞こえますが、アメリカでは非常に根の深い厄介な社会問題を形成しています。代表的な例は魔女裁判だと思いますが、魔女裁判の現代版とも言うべき事件がいろいろ形を変えて登場するので油断はできません。例えば、保育園の先生が園児の性的虐待で訴えられて有罪になり、無罪を勝ち取って釈放されるまでに何年も掛かった話し、recovered memory (取り戻した記憶) なるもので親を性的虐待で訴えた話(これを裏返してファンタジーということにすればフロイドの説に到達するので根は深い)、離婚での親権争いで、父親が幼い子供に対して性的虐待を行ったと母親が訴えた話、などがあります。洪水下のニューオーリンズでの都市伝説もそのバリエーションといえます。そして南京の落城も都市伝説の発生に格好の条件を作り出したように見えます。

近々識者による史実の検証が行われるということですが、その際に是非考慮に入れていただきたい観点です。

もっとも、都市伝説という文化的背景があったとしても、憎むべきは、それを利用して話を拡大再生産し、プロパガンダや人心操作に利用しようとする勢力であることには変わりありません。

--追記--
これを書くためにネットをざっと(本当にざっとです)調べて思ったことがあります。こういうものは軽い気持ちで読むべきではないということです。それなりの覚悟と準備と精神的な強さがなければ、頭がおかしくなります。ここで繰り返すにはひどすぎる記述や写真がいろいろ出てきます。昔し広島平和記念資料館を訪れたときにも思ったことですが、ああいうものは気軽に見たり見せたりすべきものではない、特に子供に残虐な場面の詳細を見せることは百害あって一利なしだと思うのです。

この記事によると、アイリス・チャンは「最低限、日本政府が謝り、賠償金を払い、日本の子供たちにあの大虐殺の真実を教える」ことをしない限り、正義はもたらされないと主張したようですが、とんでもないことです。アイリス・チャンは祖父母から聞いた話に子供心を傷め、そのようなアイデアを育んできたのだと思いますが、日本政府がそのようなアイデアに迎合するばかりで、成熟した現代国家として対応してこなかったことは、大変残念です。世界中の民族が祖先の残虐行為を互いに摘発して謝罪を要求し合うことの愚かさは少し考えれば分かることです。敵愾心を煽るだけで平和共存の処方になりません。そういうことを言ってくる人には、「あなたの祖先も私の祖先にいろいろ悪さをしましたが、それについてはどうするおつもりですか。私は過去を水に流して新しく平和共存関係を構築する用意があります。」という答えがあるはずです。だいたい、国家が昔し戦争したり植民地にしたりした国に対して日本のように謝罪した例は他に聞きません。

2004年のアイリス・チャンの自殺を報道したこのには、1998年に、PBSのニュース番組で行われたアイリス・チャンと駐米日本大使との対談/インタビューの記録の一部が引用されていますが、日本政府の謝罪をどう思うかという質問に対する彼女の反応は、どこかうつろで、誠実みに欠けると言うばかり。土下座して謝っても彼女を満足させることができたかどうかを疑わせるような、かたくなな態度です。何が彼女の心を蝕んでいたのかだれも知らないようですが、中国人に対する差別や残虐行為を掘り出すことに専念することが、彼女の心を癒す役に立ったようには見えません。このインタビューのひとコマがなぜあの記事に引用されたのか、なにもコメントがありませんが、アイリス・チャンの悲劇がそこに映し出されていると感じるのは私だけでしょうか。

周りのアメリカ人に大虐殺があったと思うかと聞くと、大概は、良く知らないけど、あったんじゃない?でもあんな昔のこともう関係ないよ、という反応をします。それが血塗られた歴史を生きてきた人類の知恵なのだと思います。執拗に過去にあったことなかったことの区別なく糾弾されている日本人としては、真相を究明しておく必要がありますが、他民族を苦しめたことのない民族などいないわけですから、祖先の残虐行為を互いに摘発して謝罪を要求し合うことの愚かさを世界に対してアピールすることも重要だと思います。昨日まで仲良く暮らしていた異民族が、突然殺し合いを始めるのが近年の戦争の主流になっているのは、それを影で操り煽る勢力があるからに違いありませんが、煽られないようにする知恵を養う必要があるのも明らかです。

最後に、私の父は戦前の樺太で十代をすごし、戦時中は徴兵されて満州に行っていましたが、当時の体験の詳細は一切話して話してくれませんでした。水を向けても乗ってこないという感じでした。それは父だけではありませんでした。父はかの地の人々に好意的な感情を見せることはありませんでしたから、その体験が愉快なものでなかったことは察しが付きました。長い間そのことが気に掛かっていましたが、今はそれが当時の日本人の知恵だったのではないかと思うようになりました。戦後世代がかの地の人々に対する嫌悪や憎悪を前の世代から直接受け継がなかったことはいいことだと。もっとも嫌悪や憎悪を引き起こす新しい材料に事欠かない昨今の状況は大変残念なことですが。。。

参考リンク
    先の戦争について最もよくまとめられた記事は久保有政著の日本近代史シリーズのようです。
    日米戦争はなぜ起きたか
      
    アメリカは、真の敵が誰かを見誤った。
    「南京大虐殺」は捏造だった
      
    日本兵の犯罪は少数あったが、「大虐殺」はなかった。
    日米戦争とは何だったか
      
    「本当に勝ったのは日本である」というドラッカーの言葉の意味。 




    日韓併合時代の真実
      
    日本と朝鮮が仲良く手を取り合って生きていた時代があった
    韓流歴史観を正す
      
    日本は、自立できない朝鮮を建て直し、救った
    中国の「正しい歴史認識」の正体
      
    日本は、内戦に明け暮れる中国を救おうとした。
    日中戦争の真実
      
    当時のローマ法王も、中国での日本の行動を支持した。
    日本とユダヤ
      
    日本とユダヤは、こんなに密接にかかわってきた。
      
    英語版もあります。 
    The So-Called Nanking Massacre was a Fabrication
    The Japanese military in Nanking was humane. The alleged massacre, which was said to have been committed by the Japanese military did not take place.
    The Pacific War - The USA Mistook the True Enemy
    The Pacific War and the Basis of Racial Equality
    The Pacific War was not "democracy vs. fascism." The USA mistook the true enemy. The true enemy of the Americans was not Japan. Japan fought the war for self-defense and to liberate Asian countries. It became the war of making the basis for racial equality.
    China’s Lie About the Senkaku Islands
    Why the Chinese Government tells a lie about the Senkaku Islands of Japan.
    Watch Documentary Movies of Nanking at Youtube
    (These are valuable records of the peaceful and restoring city of Nanking just after the Japanese occupation)
    * Chinese refugees and the Nanking Safety Zone
    * Japanese soldiers distributing certificates to Chinese citizens
    * Japanese soldiers preparing for the new year 1938 and the Chinese children celebrating New Year's Day


    その他の重要な資料

    • 日本の歴史家、秦 郁彦が南京事件の真相究明を英語で書いた文献
      http://www.wellesley.edu/Polisci/wj/China/Nanjing/nanjing2.html  (This seems to be the mainstream view in Japan about the Fall of Nanking)
    • Frank Capraのプロパガンダ映画がドキュメンタリー風に作られていることを英語で解説したビデオ。シナの博物館ではこれを史実の資料といて展示しているそうです。https://www.youtube.com/watch?v=r4zo6EMB2xc (This video shows how Frank Capra's propaganda movie was made with staged acts.)
    • 中国、朝鮮、ロシアが日本人に対して行った残虐行為、戦犯行為についてはネットで検索するといろいろ出てきます。Tongzhou (通州)1937もその1つです。   

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